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일본 SuKara 2007년 8월호
『ソウルアートガイド』編集長
キム・ダルチンさんに聞く、ソウルのミュージアム事情
リード
その国の文化に触れるには美術館や博物館を訪れるのが一番と言うキム・ダルチンさんの言葉通り、韓国文化のパワーはアートの世界にも反映されているのがわかります。古美術からポップなアートまで今、韓国のアートはとってもホット。ソウルのミュージアムを通して、新たな韓国発見の旅に出かけてみませんか?
韓国美術の情報を満載したガイドブック
「外国を訪れたときにはミュージアムに行くのがとても大切だと思います。なぜなら美術館や博物館に行けば、その国の歴史や文化に直接触れることができるからね」とおっしゃるのは『ソウルアートガイド』の編集長、キム・ダルチンさん。
『ソウルアートガイド』は、ソウル市内の主要な美術館やギャラリーに関する情報がすべてと言っていいほど掲載されているガイドブック。これなしではソウル市内に点在する美術館やギャラリーを見てまわるのはとうてい無理!と言っても過言ではありません。
「新聞や美術雑誌の情報欄は十分なスペースがなく、アーティストが展覧会の情報をより広く、より多くの人びとに知らせるには限界があるんですね。展覧会だけでなく、幅広い美術情報を伝えるためのいい媒体がないだろうかと考えたんです」。キム・ダルチンさんが、キューレーターとして約20年間にわたり現場で培った知識やノウハウを生かして『ソウルアートガイド』を創刊したのは2002年。創刊当初はA2大の紙を六ツ折にしたシンプルなものでしたが、徐々に内容を充実させて、現在は138ページにも及ぶ立派なガイドブックになりました。
展覧会の情報はもちろんのこと、緻密で正確なマップをはじめ、一線で活躍する評論家によるコラム、海外のアート情報、さらにはアートに関する新刊本の紹介まで、韓国美術全般に関する情報が満載されています。何よりも写真がとってもきれい。フリーペーパーなのに、そのクオリティは美術専門誌にも引けをとりません。基本的にハングルで書かれていますが、海外からの観光客のために、作家の名前と展覧会名はできるだけ英語で表示しています。
韓国の美術館・博物館の歴史
キム・ダルチンさんによると、韓国の美術館・博物館の歴史のはじまりは20世紀初頭にさかのぼります。「1908年に昌徳宮の中に開館した李王家博物館が、韓国はじめての博物館だと言えるでしょう。李王家博物館はその後、1938年に徳寿宮にある石造殿に移され正式に開館しますが、当時は李王家の所蔵品である古美術や文化財が展示されていたようです」
いわゆる「近代美術」が韓国に導入されたのは1910年代以降で、当時はまだまだ美術展の開催は決して多くはありませんでした。やがて1922年に朝鮮総督府が主催する公募展「朝鮮美術展覧会(鮮展)」がはじまります。鮮展は当時、日本政府による植民地政策の一環として開催されたものですが、韓国内および日本や西洋に留学した作家たちの登竜門でもあり、韓国唯一の官展として1944年まで続きました。朝鮮総督府で開催されていた鮮展には日本人も出品していたのに対して、韓国人だけによる「書画協会展」展覧会は、主に学校の講堂などを会場に開催されていたと言います。
「1969年に国立現代美術館が景福宮の敷地内に開館したのが、本格的な美術館のはじまりです。その後1972年に徳寿宮の石造殿へ移され、さらに1986年に果川に移転し現在にいたります。国立の美術館はこの現代美術館のみですが、90年代からは光州や釜山をはじめとする地方都市にも公立の美術館が徐々に開館しはじめました」
多様化する韓国美術
やがて80年代後半から90年代にかけて、美術館やギャラリーが次々と登場してきます。文化の中心地ソウルらしく、仁寺(インサ)洞(ドン)をはじめとして司諫(サガン)洞(ドン)や光化門(カンファムン)周辺など、大小さまざまなギャラリーが集中している地域が点在しています。それぞれに特徴があり、古美術や東洋画から現代美術まで展示内容は多種多様。展覧会をめぐり歩いていると、韓国は日本に比べて現代美術に開かれている印象を受けます。現代美術の展示自体が多いのもそうですが、空間を生かした大胆かつ洗練されたディスプレイを見ると、難解に見える現代美術が親しみやすく感じられるのが不思議です。
「韓国の現代美術はたとえば70年代のモノクローム派や80年代の民衆美術、90年代のモダニズムの復活などに代表される、時代ごとの流れがありましたが、現在は非常に多様化してきていると言えます。いわば脱ジャンル、脱媒体の時代ですね」とキム・ダルチンさんは分析します。現在の韓国アートシーンの多様性と潜在力がそのまま『ソウルアートガイド』の内容の豊富さに反映されているように思います。
アートと人が近い韓国
韓国の美術館では親子連れの姿を良く見かけます。子どもたちが自由に鑑賞しているのを見ると、日本に比べて開放的な感じがするので尋ねてみると「楽しんで見るのはいいのですが、美術鑑賞のマナーに関してはもう少し勉強する必要がありますね(笑)」とちょっぴり苦笑い。「ただ、韓国の人びとは非常に教育熱心なので、休日になると親が子どもを連れて美術館や博物館を訪れることは多いですね。特に博物館に行けば教科書に載っている文化財の本物に触れることができますから、とてもいい勉強になるんです」。
パブリックアートに力を注いでいる韓国では、アートを通じたコミュニケーションを充実させるために、さまざまな試みが行われています。家族連れで気軽に美術館を訪れる人が多いのもそういった活動の成果なのかもしれません。キム・ダルチンさんもガイドブックの編集に携わりながら、アートと人びとの間の距離がずいぶん近くなったのを感じるといいます。
キム・ダルチンさんのアドバイスをもとに、ソウル市内を中心に主要な美術館・博物館を取材しましたが、それぞれに個性があり、改めて韓国美術の裾野の広さを感じました。「博物館や美術館に行けばその国の歴史や文化に直接触れることができる」という言葉の通り、韓国の文化に触れる最も近い道はもしかしてミュージアムにあるのかもしれません。ギャラリーが集まる地域にはおしゃれなショップやカフェなども多いので、肩の力を抜いて散策気分で楽しんでみませんか?
『ソウルアートガイド』を手に、いざアートの旅に出発!
◎ポートレート
キム・ダルチン(金達鎮)
1955年生れ。中央大学芸術大学院卒業後、国立現代美術館学芸員、ガーナアートセンター学芸室長を経て、現在キム・ダルチン美術研究所所長。『ソウルアートガイド』の編集のほか、美術・工芸など多方面にわたる執筆で活躍中。韓国美術のエキスパート。
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